こりくつ手帖

なにかというとすぐに例え話をはじめる20th century girl

私には女子校力が足りない

クソLINEへの敗北

せっかくブログを始めたのでなるべくコンスタントに書きたいと思っていたが、頻繁に起きる子の寝かしつけをしながら自分も寝てたり(寝かしつけ後の時間に書くことにしている)、書いてみた文章が説教臭くてなんだかなだったり、目が冴えた夜に限って知人から送られるあまりこういう言葉は書きたくないがクソと言わざるを得ない内容のLINE(以下クソLINE)に対応したりと、中々に多難であった。

 
論旨のはっきりした文章を書こうと思いすぎて更新できなかった反省と、クソLINEに費やした時間を昇華させたいという思いから、恐縮なほどに私事で特にこれといった解決もない今回のエントリを書き進めてみたい。
 
まずクソLINEの概要について触れておくと、送り主は2歳年上の独身男性である。
仕事上の知人として円満な付き合いをしており仕事中や飲み会でもよく話す間柄であったが、それ以上の関係ではない。
先日1年振りに連絡が来た。
以下大まかな流れ
知人「久しぶり、元気?」
私「お久しぶりです、おかげさまで元気です」
知人「最近旦那とはどう?」
私「万事快調ですよ」
知人「最近飲んでる?」
ここまでで夫との関係及び近々飲みに行けそうかを探ってくる
私「子供生まれたので禁酒中です」
知人「そっかおめでとう」
知人「ところで育児中って性欲あるもん?」
私「はあ…別に普通ですが(唐突すぎるだろ)」
知人「そのへん詳しく聞いていい?」
私「詳しくは言えません(落ち着け)」
何度か話題を逸らしながら会話を続けるも、途中隙あらば性的な話題を振ってくる知人
知人「ツッコミ鋭いな〜。性癖SかMかで言ったらSでしょ?」
私「どちらでもないです(めげないな…あとその二元論飽きた…)」
知人「男の感じてる表情とか好きでしょ?」
私「はあ…相手によるでしょうね(質問形式で言えば必ず答えが返ってくると思うな)」
知人「どういうプレイが好き?」
私「すみません寝落ちします(おまわりさんこいつです)」
 
強制終了にもめげずに翌日も連絡が来たが、これ以上対応の仕方がわからないので無視した。
飲みに行けないことを察知して以降も攻めの姿勢を崩さないあたり「取れるもんは取っとけ」とでも言わんばかりのハングリー精神に溢れていた。
そこまで切羽詰まっているなら既婚者の私よりもっと機動力の高い女子を探した方がいいと思うが、余程人材が不足していたか、持て余した人妻は落ちやすい的な豆知識を仕入れたかのどちらかであろう。
 
不毛な時間と引き換えに疲労感が残った。
 

敗因は我にあり

私は知人に誘い出されることも性的なプライバシーを晒すこともなかったが、必要以上の時間を費やしたことと欲望にあてられた点で既に敗北した気分であった。
思っていた以上に知人が下衆であったことが最大の原因だが、私の対応にも敗因がある。
見てわかるように、知人の振りに対して私は表面上会話を成立させてしまっている。
目上の相手なので角を立てまいという思いと、相手が良識を持って察してくれるだろうという期待から、愛想のない返答で拒否感を示そうとしたがまるで無力だった。
いっそ()内のセリフをそのまま伝えるべきであった。
 
なお、この会話だけを見ると知人の人間性が疑われそうだが、日頃は不愉快な人ではなくむしろ尊敬できる人物である。
だからこそ「お茶を濁せば察してくれるはず」と期待してしまった。
それまで良好な関係にあった人が突然不審な言動を始めたとき、すぐに拒絶の体勢に転じるのはけっこう難易度が高い。
相手の気を損ねてはならない、冗談の通じないキツい女と思われたくない、など後から考えたらどうでもいい懸念がまとわりついてくる。
だがそんなこととは関係なく、こちら側には「はっきり拒絶しなかった」という事実が残ってしまう。
 
会話の末に知人の発する内容はイタズラ電話のレベルになり私には不快感が残ったのだが、仮に第三者に不快感を訴えてもこれでは説得力に欠けるのではないか。
このLINEに端を発したストーカー行為を警察に相談に行き警察官に文面を見せたら「これじゃー相手も勘違いしちゃうよー、なんでもっとはっきり拒否しないの?」と言われて「そうですよね…」と力なく笑う私、というところまで瞬時に妄想した。
もちろんそんな被害に発展してはいないのだが。
それでも実際におこった性暴力の事例で「なぜ被害者はもっと早くに拒絶しなかったんだろう」と思われるようなケースの背景にはこういった心理が働いているのではないかと身に染みて感じられた。
そう考えると、強姦の加害者は行きずりの他人よりも被害者の知人・友人が多いということに急速にリアリティが湧いてくる。
 
話を私事に戻そう。
敗因は私にある、と書いたが、敗因があるから私が悪かった(ひいては暴力や強制はそれを拒絶できない被害者に落ち度がある)などとは思わない。
ただ私がより迅速な拒絶テクニックを身につければ、今後似たような場面が訪れたときに私も不快な思いをせず、相手も醜態を晒さずに済むだろう。
もっとそういう力を磨きたい。
ここで脳裏に浮かんだのが「女子校力」という言葉だ。
 

女子校出身者は「異を唱える力」に長けている

女子校力という言葉は今作ったものだが、私は以前からこの力の存在を感じていた。

私は小中高と共学校で過ごし、大学では工学部に所属し、社員の9割が男性という会社に理系就職した。

共学育ちどころか後半はもはや男子校に通っていたと言っても過言ではない。

そんな私が周りの友人達を見てみると、共学校出身者よりも女子校出身者の方がある種の逞しさを持っている傾向がある。

その逞しさとは、社会の理不尽や不条理に異を唱える力だ。

 

世の中の、特に人間関係や男女問題が絡む事柄について「よくあることだから」「そういうものだから」となんとなく流されていることを「それおかしくない?」とあっさり切り捨てるタイプは女子校出身者に多い気がする。

共学校という現実社会のミニチュアのような空間で過ごしていると、異性を交えた組織への順応力は上がるが、順応しすぎて違和感や問題意識をスルーしてしまうこともあるように思う。

(おそらく日常的に男性の目を感じずに行動する経験が少なく、異性の視点を取り入れることが多かれ少なかれライフハックになるため、世間に転がっている玉石混交の「男性目線」を玉も石も受け止めてしまうのではないか。

これは別に同級生男子が圧力をかけてくるからというわけではない。

むしろ同級生男子と友好な関係を築いた経験があるからこそ、社会で理不尽な目にあっても「そんなに悪意をもった男性がまさか身近にいるまい」と事態を甘く見ようとする傾向が少なくとも私にはある。)

それに比べて女子校出身者はもっと自分の感覚に正直というか、余計な順応が少ないように見える。

当人たちはそれを「空気が読めない」「世渡り下手」「男を立てられない」などと自嘲する傾向があるように思うが、澱んだ空気を読んで腐敗した世を渡り自力で立てもしない男まで立てる必要があるだろうか。

 

おかしいと思うことをおかしいと言うことはコミュニケーション能力の不足などではない。

むしろ真のコミュニケーションですらある。

波風立つことを恐れずに理不尽を拒む率直さ、それを女子校力と名付けたい。

 

女子校力を磨きたい

 学校というものを卒業して久しい私が女子校力を磨くにはどうすればよいのか。

 

まず自覚したいのは、はっきり相手を拒絶できないのは優しさではなく保身だということだ。

拒絶したい相手にすら憎からず思われたいというのは無茶な欲求なので諦めよう。

 

そして自分の感覚を尊重したいなら、他人の感覚も尊重すべきだろう。

やってはいけないのが、「これはおかしい」と声をあげる女子校力の高い人に「大げさだ」「そこまで事を荒立てなくても」と意見を封殺することだ。

 

当然だが、女子校力は男子でも持っているものだ。むしろ男子こそ強い女子校力が必要と言えるかも知れない。

女子が「口うるさい」「可愛げがない」などと人格否定されることを恐れて思ったことを言いづらくなるように、男子の場合も「器が小さい」「根性がない」などという言葉を圧力として感じることが少なくないだろうから。

 

今回遭遇した迷惑行為をきっかけにコミュニケーションについて考えることができた。

ありがとうクソLINE。

とは決して言うまい。